2003年、不慮の事故により日本で他界した伝説のスノーボーダーでありアーティストのJeff Anderson。彼の生誕30周年を記念したアート・ショー「I AM SNOWBOARDING」が原宿ART-IN-GALLERYにて開催された。今回は、同展のサポートを行ない、アーティストとしても作品制作を手がけたMike Parilloに、Andersonとのエピソードをはじめ、アート・ショー開催の意義や自身の活動について伺った。終止にこやかな表情で語るParilloの言葉の端々には、Andersonへの深い愛情が溢れていた。 
 
 
——アーティストを志した経緯を教えてください。
 
Mike Parillo(以下MP): 1993年にVOLCOMを代表するDVD作品、「The Garden」のジャケットを作ったのがきっかけなんだ。趣味でずっと絵を書いていたけれど、アーティストとしてはそれが最初だね。 ——今回のアート・ショー「I am Snowboarding」のサポートをされていますが、その経緯を教えてください。 MP このイベントのオーガナイザー、Torrey Herbenar Cookに声をかけてもらったんだ。アーティストでもあったJeffのために、僕たちもオリジナルの限定作品を作りたいというアイデアがあったし、いろいろな面でお互いのゴールが合致したからね。Jeffの人生や彼のお母さん、彼のコミュニティなど、全てを結びつけることができると思ったんだ。また、今回の全収益はJeff Anderson Memorial Fundに寄付することになっているよ。このショーを通じて、彼を忘れないでほしいということだね。みんながJeffを愛していること、そして、そこにはさまざまなコミュニティやファミリーとの深い繋がりがあるということを知ってもらいたい。
 
 
——今回のためにフォトグラファーTim Zimmermanとコラボレーション作品を制作していますが、その経緯を教えてください。
 
MP:Torreyに薦められて、一緒に制作をすることになった。今回はJeffと関わりのあったフォトグラファーやアーティストにたくさん参加してほしいということで、フォトグラファーの写真作品にペイントを施したんだ。普段はしないアプローチだったけど、うまく成功したと思うよ。写真からペイントのアイデアを得た部分もあったから、良い影響を受けたし、良いコラボレーションになったよ。写真の原型がほとんどなくなってしまったけどね(苦笑)。 ——作品にはどのような思いが込められているのですか? MP Jeffのことだけを考えて描いたよ。ある程度描く前から作品のアイデアもあったし、動きのある写真だったから数日間で仕上げることができた。
 
 
——Jeff Andersonとの出会いについて教えてください。また、彼はどんな人物でしたか?
 
MP:91、92年だったかな。彼はまだ12歳だったよ。VOLCOMのスノーボード作品の撮影で初めて会ったんだ。本当に明るくて、感情的で、デンジャラスなキッズだったよ。やってはいけないことばかりをやりたがるからね(笑)。僕はライダー兼チーム・マネージャーだったから、キッズ・ライダーの世話をして引っぱっていく立場だったんだ。兄貴的な存在だったのかな。とはいえ、たくさん悪いことも一緒にしたね(笑)。
 
 
——彼との思い出深いエピソードがあれば教えてください。
 
MP:2000年にLAで過ごした数日間が一番思い出深いね。僕の家にJeffが泊まりに来たのだけれど、3日間で10個の作品を制作したんだ。アーティストとしての才能が開花して、新たなステージに向かう瞬間に立ち合えたと感じたよ。周囲にたくさんのアーティストがいたことで、Jeffの世界観がどんどん広がっていった。彼にとってアートは、頭の中で思っていることを具現化する手段だったんだ。
 
 
——アート・プロジェクト・カンパニーASYMBOLについて、具体的にはどのような活動をしているのですか?
 
MP:アートが好きで作品を制作している友人がたくさんいるのだけれど、彼らの作品を発表する場も売る場所もなかったんだ。またもう一方では、そういった作品を見たい人や買いたい人がたくさんいた。だから、プロ・スノーボーダーのTravis Riceの発案で、そういったコミュニティを提供できる場を作ろうということでASYMBOLを設立したんだ。主にウェブ・ギャラリーを開設して、彼らの作品を販売しているよ。ただ販売するだけじゃなくて、その作品に潜むエピソードだったり、細かい背景を伝えたり、スノーボードやスポーツの歴史、瞬間瞬間に生まれるアートを守っていきたいと思っている。あと、今回のショーで飾られている全作品は、ASYMBOLのウェブサイトで閲覧することができるんだ。作品のディテールまで見ることができるから、楽しめると思うよ。
 
 
——スノーボーダーの中にはアーティストとして活躍する人が多数いますが、スノーボードとアートの関係性をどのように捉えていますか?
 
MP:スノーボード自体、滑り方やトリックを自分たちで創作するという“クリエイティヴ”な行為であって、アートに対する“クリエイティヴ”も同じ。料理や写真もそうだし、とにかく“クリエイティヴ”なことが好きなんだよ。
 
 
——今後の創作活動について聞かせてください。
 
MP :今後もTravis Riceのシグネチャー・スノーボードのペイントをメインに、今まで通りアート活動を続けていきたいし、まだ行ったことのない国を旅して、いろいろな絵を描いていきたいね。
 
 
Mike Parillo
US・ワイオアミング州のウィルソン在住のアーティスト。VOLCOMのさまざまなアートワークに携わる他、プロ・スノーボーダーTravis Riceのシグネチャー・スノーボードのデザインを手がけている。また、Riceと共に立ち上げたアート・プロジェクト・カンパニーASYMBOLではアート・ディレクターを務め、ウェブ・ギャラリーにてアート作品の展示・販売・保全に尽力している。
www.asymbolgallery.com 
 
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