2004年、UNDER COVERの高橋盾と行なった共同エキシビション「Intermission」から約1年の沈黙を破り、05年より新たなステージへと移行した MADSAKIの創造活動。彼のチャプター2を代表するのがドローイング作品として展開してきたSUNSEXシリーズ。この連作が昨年12月14日から 21日まで開催されたadidas主催単独エキシビション「"adidas" - ALL DAY I DREAM ABOUT SUNSEX」にて、ついに立体インスタレーション作品として昇華した。もとより平面で表現してきたSUNSEXは立体作品の設計図と捉えていた MADSAKI。そこで、立体作品が完成するまでの過程や想い、今後の展望について語ってもらった。
——初の立体インスタレーション作品ですが、どのような構想を描いていましたか?
MADSAKI(以下M):構想としては、+81 Vol.37の表紙にもなったドローイング作品SUNSEXを立体にすると決めていたんだよね。この模型の土台を見るとたくさん線が描かれているんだけど、完成型に辿り着くまでに立体ピースがあったところの線なんだ。他にもいっぱい様々なタイプの立体ピースをはめ込んで、作っては壊しての繰り返しの中で、進化して最後に辿り着いたのがこの形。
——この展示会場を見つけてから、立体作品の構想を練ったのですか?
M:とにかくバカでかい立体作品を作りたくて。倉石一樹君からここを教えてもらい、見に来たらひと目惚れしちゃって。この4本の柱を活かすための形を考えて、柱があることで作品に流れを出せたし、正方形の空間内で遠近法を使い距離感を出すことができた。あと、高さが6メートルもあったから高低差をつけることもできたしね。とにかく、各ピースが接地する角度や高低差をつけるための角度、一辺の距離、ライティングによって生まれる影など、全部計算し尽くした作品だね。
——なぜ巨大な作品を作ろうと思ったのですか?
M:例えばグランドキャニオンに行って、あのデカさを見たときに「うわぁっ」となる自然の圧倒感を、この都会の中で見せたかった。見に来てくれた人がそういったリアクションを起したときには、それが伝わったのかなと。この作品は見て体感しないとわからないよね。写真でも伝わりきらない。
——空間に線を描いているように見えるのですが、その辺りも意識されていますか?
M:もちろん。見た人がそう気付くだろうと思って、最初から意識して作ってる。もう本当に全部計算されてるんだ。偶然はどこにもない。ただ、立っていることだけが偶然。ネジも釘も糊も接着剤も使わずにフリースタンディングで立っているから。でも、1回目は立てる角度を間違えて倒れちゃったんだけどね(笑)
——この立体作品はドローイング作品の進化型なのか、それとも別物ですか?
M:別物ではなくて、進化型だね。だって、この作品が床と接地しているところとドローイング作品のこの線とが同じって言えるから。
——カラーを白と黒にしたのは?
M:モノクロの映画を見ていると、勝手に自分で色付けをしていることってあるよね。どの時代にあってもおかしくないし、年月が経っても時代を感じさせない色だから、自分の中で白と黒は永遠なんだ。
——実際、作品が出来上がったときの感想は?
M:完成するまでの1、2ヶ月は模型ばかり見ていたから、作品が出来上がったときは自分が模型の中にいるような感覚だったし、2日間ぐらいは実感がなかった。自分が夢から覚めていないような不思議な感覚。
——ドローイング作品を立体にする難しさはありましたか?
M:それはなくて、逆にすごく楽しかった。いつも絵を描いている時に、自分では立体に見えていたし、もともと絵は立体のための設計図だと思っていたしね。自分の絵をシンプルにして、立体にすればいいとわかっていたんだけど、これをどう立体にしたら面白いかということを一番考えた。あとは、この場所のために作ったことも楽しさの要因のひとつだね。この場所じゃなくても成立する作品だけど、他の作品をここに持ってきても成立しない。それだけは言える。
——どの角度から見た作品が好きですか?
M:全部好き。場所によって柱の雰囲気や各ピースが全部違うように見えるからね。見に来た人の中には、銀閣寺を思い出すとか、京都の龍安寺にある石庭を思い出すとか言ってもらえて。自分自身もそういうところから影響を受けているので、すごく嬉しかったね。
——今後も立体作品を造りたいですか?
M:もっともっとデカい作品を造りたいね。次回は野外でやってみたいし、日本庭園で一番やりたい。やっぱり心は和だからね。自分でも和がないとこんな作品を造れないと思うから。それを昔からある日本のものと融合させてみたいんだよね。絶対、調和すると思うし、逆にそのコントラストが面白いと思う。新しい日本の文化、新しい日本の見方、新しい和といったネオTOKYO、ネオJAPANみたいなことを表現していきたい。あとは、いきなりこれが高原の中にあってもいいと思う。全部、金色に塗ったりしてね(笑)。
MADSAKI
1974年元旦、大阪生まれ。1980年にNYへ移住。96年Parsons School of Designのファインアート科を卒業。25年間をNYで過ごした後、2004年に創作活動の場を東京に移す。05年、彼自身の現在の深層心理を表現する SUNSEXシリーズを制作し始め、今回ついに初のインスタレーション作品にて単独エキシビションを開催。彼にとって“創造=アート”とは、日常生活や創作を通じて意識化されたものを幅広い表現方法で世の中に具現化していくことである。