アップルストア福岡とSTUSSY HAKATA CAPTER 7th ANNIVERSARYのイベントに出演するため、約1年ぶりに来日したアーティストFUTURA。1日に2回行われるライヴペイントにも気負いすることなく、 「あまり深く考えすぎずに、フリースタイルで楽しく取り組みたい」と語る。ライヴ直前のFuturaに、現在はどんな心境で作品制作に取り組み、今後どのような方向に進もうとしているのかを聞いた。
——スプレーペイントとグラフィック作品に対する姿勢を聞かせてください。
Futura(以下F):その二つはかなり違うものだけど、両方とも楽しんでやってるよ。グラフィックに関して言えば、今はみんなコンピュータで作業しているから、僕が特別ユニークなことをしているという意識はないね。もちろん、自分の感受性やデザインに対する美意識は持っているよ。僕にとってドローイングやペインティングは温か味があってよりパーソナルなもの、グラフィック・デザインはある種冷たいイメージがあるね。
——クリエイションに行き詰まった時は、どのように解消するのですか?
F:グラフィック作品に行き詰まりを感じたことはないけど、最近、パーソナルワークやペインティングで壁にぶつかったんだ。でも、何かがきっかけとなってそれを乗り越えることができた。具体的にそれが何だったのかはわからないんだけど、時期の問題だったんだろうね。今はとてもオープンな気持ちで、もっと自由に表現できるようになったし、自然に新しいことをスタートすることができる。何かを生み出すには、今が一番良い時期だね。最近、旅行でタイに行ってたんだけど、とてもスピリチュアルな旅でポジティヴなパワーをもらったよ。
——作品を作る時はどのようにインスピレーションを得るのですか?
F:日々の生活から影響を受けているよ。映画からインスピレーションを得ることもある。『2001年の宇宙へ旅』はとても衝撃的な作品だったよ。FUTURA2000というネーミングもそこから生まれたしね。
——これまでアーティストとして活動してきた中で、ターニングポイントはありましたか?
F:最初の大きなターニングポイントは、1980年に起こったNYムーブメントだね。アンダーグラウンドで様々なことが始まった時期なんだ。僕個人のことで言えば、ZEPHYRやDONDI たちと出会ったころでもある。そして85年、86年にはいろいろなことが下火になって、96年ぐらいにまた活気がでてきた。そのころ僕は、アーティストではなくコミニュケーターとして活動することが一番自分に合っていることに気づいたんだ。そして、96年にコミュニケーション手段としてのウェブの存在を知ったことはとても大きな転機になった。ウェブを通して自己表現をしたり、グローバルな視野を身に付けることができたんだ。
——現在、注目しているメディアはありますか?
F:僕は今も様々なことに関わっていて、コマーシャル、プロダクト、洋服、スニーカーやトイもその中の一つ。ペインティングはコマーシャルやプロダクトと関わってくるし、また利益を生まないコミュケーションもあるよね。新しいメディアとしては映画に興味があって、2010年以降を目処にアーティストのドキュメンタリーやミュージック・クリップなどを作ってみたいね。まだ誰もやったことがない、新しいことを表現したいと思ってる。いくつかアイデアはあるんだけど、まだはっきりとしたヴィジョンはない。ただ、夢で見た中国のイメージが頭の中にあるんだ。
——ミュージシャンJohn Mayerのビデオ・クリップ「Waiting on the World to Change」では、ご自身が出演されていますね。
F:その作品は、NYで活動するアーティストのドキュメンタリー。Johnと僕がそこに込めたメッセージは、"世界中ではたくさんの問題があるけど、みんなでよりよい世界を求めて変えていこう"という楽観的なものだったんだ。僕が出演したのは、もっとクリエイティヴィティにおける自己表現をしたかったから。その中でマスクを被っているんだけど、それは自分らしさを出すためかな。
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Futura
1955年ニューヨーク生まれ。80年代に地下鉄などでグラフィティを描き、当時のストリート・アートをリード。さらにはグラフィティの存在意義までをも高め、今や「伝説のグラフィティ・アーティスト」として紹介されることも多い。グラフィティのみならず、ペインティングやグラフィック・デザイン、フィギアの制作でも広く知られている。